氷点(青春の一冊)

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
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一冊って言ってるのに4冊もはりつけやがって!という感じですが、文庫で上下巻な上に続編も上下巻なので……。

氷点(上) (角川文庫)

氷点(上) (角川文庫)

氷点(下) (角川文庫)

氷点(下) (角川文庫)

中学校の図書室で読んだ記憶があります。何がきっかけだったのかは今となっては思い出せないのですが、筒井康隆さんの「農協月へ行く」や宗田理さんの「ぼくらの七日間戦争」、山際淳司さんの「スローカーブを、もう一球」と一緒、というイメージがとても強いので、夏休みの課題図書か何かに指定されていたのかもしれません。

図書室で上下巻を読破した後、物足りずに本屋で上下巻+続編上下巻を買って、本当に何度も読み返しました。継母と継子、出自の秘密……と何度もドラマ化されるのもさもありなんというドラマチックな展開なのですが、そのドラマチックさに惹かれて夢中になった記憶はあまりなく、登場人物それぞれの利己的な心情や利己的にならざるを得ない状況などを興味深く思ったように思います。何しろ登場人物の誰にも感情移入がしづらい。主人公の陽子にさえも。

その陽子が、「常に正しくあろう」「自分を疎む養母のようにはならずにいよう」ということがそもそも罪なのである、と気づくあたりで、自分もはじめて「何も悪いことをしていない人にも『原罪』というものは存在しうる」と理解したような気がします。「気がする」というのもあやふやではありますが、私はクリスチャンではなく、真に原罪の意味をとらえきれていないのでこのように書いています。

本編では「罪」、続編では「ゆるし」がテーマで、「人間にとって赦しとは一体何なのか」ということが最後まで語られているはずなのですが、私は続編に登場する達哉が最後の最後までとにかく嫌で(たぶん今読み返してもものすごく嫌いだと思う)、一度許さないと決めた人は絶対に許さない自分の性格をつくづく思い知ったという小説でもあります。

同時期に読んでいた小説に「天上の青」があります。現在の曽野綾子さんの言説には同意しかねる部分が多いのですが、この頃は面白く読んでいました。当時毎日新聞をとっていて、毎日連載を読むのが楽しみでした。奇しくも自分の名前の由来の一部となった*1作家さんの作品を、同じような時期に読んでいたのだな、とWikipediaを読んで思い至りました。

天上の青〈上〉 (新潮文庫)

天上の青〈上〉 (新潮文庫)

天上の青〈下〉 (新潮文庫)

天上の青〈下〉 (新潮文庫)

*1:実際にはもっと別の要素から選んだようですが、同名の作家がいることは意識していた、と親から聞いた記憶があります。